年末年始、故郷へ帰りましたか?
ホラノコウスケ(@kosuke_art)です。
岐阜県美術館にて『ディアスポラ・ナウ!〜故郷(ワタン)をめぐる現代美術』を開催中です(2018.1.8まで)。
「ディアスポラ」は移住者の意。
もともとは古代ギリシャ語に由来する言葉で、第二次世界大戦後、ユダヤ人の「民族離散」の歴史を表現するものとして使用されました。
この岐阜の地は、杉原千畝(ナチスの迫害から逃れる人々に独断でビザを発給し、6,000ものユダヤの命を救った)の故郷でもあります。
本展では、中東地域にゆかりのある海外アーティスト5名と、日本人2名のアートユニット・キュンチョメの作品を展示。
フォトジェニックな作品もありますが、以下のように何とも考えさせられる内容です。
故郷への想い
本展出品作家の多くが関わる中東地域も、紛争や災害により、故郷を追われ、離散する人々が生み出されています。
これは何でしょうか?
「Eye」「Nose」などと書かれています。
オシャレなアートだと思ったのですが…、
これは映像を文字で表したものだったのです。
メディアが世界中に広めているシリアの現状をとらえた写真に、写っているひとつひとつを文字にすることで優しく頬をなでるように丁寧に、そのイメージを心へ刻み込みます。
こちら↓は女性が朽ち果てた部屋の掃除をひたすらしている映像。
ここは1967年のイスラエルの侵攻によって破壊された、ゴラン高原のシリア占拠地域・アイン村。
友人を招き入れるために掃除し部屋をしつらえるという女性の動作はいたって日常的で当たり前のこと。
しかしそれをこの場所で行うことは非日常。
最後に座って遠くを眺める女性のこの姿がなんとも言えません。
さてこの↓可愛い人形たちは《スペース・エクソダス》という5分24秒の映像作品の関連作品。
可愛いですね。
胸にはパレスチナの国旗があります。
その映像というのは、宇宙飛行士(作家のラリッサ本人)の宇宙船が月に着陸、
パレスチナ人にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな一歩である
と、どこかで聞いたようなことを言って、月面にパレスチナ国旗を立てます。
ところが彼女は無重力の宇宙に放り出され、
エルサレム、エルサレム…
と交信し続けます。
第二次世界大戦後にいつまでも安住の地を得られなかったパレスチナ人のたどった悲劇をパロディによって皮肉る、シュールな作品です。
こちらは、シリアを含むアラブ連盟の22の国旗と、3本のブラシでできた作品。
チュニジア、エジプト、リビアの旗だけはブラシです。
これは長期独裁政権を失墜に導いた(一掃した)民衆蜂起を示しているのだとか。
逆に言えばブラシのない他の国は、それをできていないわけです。
前に代官山で見たこのムニール・ファトゥミの作品がとても良かったので、別の作品が岐阜にあると聞き、今回この岐阜県美術館へ来ました。
こちらは同じく、ムニール・ファトゥミの作品。
これもユニークですね。
さて、次はこちら。
これ ↓ は何でしょう?
無数の銀の旗が、首を振る扇風機に煽られてはためいています。
作品のタイトルは、パレスチナ独立宣言の起草者で詩人のマフムード・ダルウィーシュの詩からとったのだとか。
旗が揺れて起こるざわめきの音が印象的です。
旗を風で無理矢理なびかせているのか。
あるいは風で旗を鼓舞しているのか。
しかし、扇風機がよそを向いたら旗は止まります。
あなたは何を感じますか?
一方こちらの映像作品。
久しぶりに見ました、福笑い。
実はこれ、目隠しした2人のシリア人難民が一つの顔を作る映像作品。
なかなかうまくいきません。
最後はこちら。
東日本震災後、福島の仮設住宅に住む帰還困難者と一緒に、故郷へと続く道を封鎖するバリケードをフォトショップ(画像処理)で消していく様子の映像作品。
作業中の笑い声も多く聞こえるのですが、自分の町への思いが語られる様子には、胸をギュッと握られる思いがします。
まとめ
他にもユニークな作品が多いですし、映像作品が多いので、ぜひ現地で鑑賞してみてください。
「日本人には関係ない」と一瞬おもってしまっていた私でしたが、そうでした、帰ることのできない人たちがいるんですよね。
あなたと故郷の関係は、どうですか?
場所:県民文化の森 岐阜県美術館
住所:岐阜市宇佐4‐1‐22
会期:2017年11月10日(金)〜2018年1月8日(月祝)
開演時間:午前10時00分から午後6時00分(入場は午後5時30分まで)
入場料:一般900円、大学生700円、高校生以下無料
でもやらない後悔より、やった後悔の方がいい。
コウスケ(@kosstyle)でした。