あなたも癒やされる?!
1年で536展のアートを巡ったライター・講師、ホラノコウスケ(@kosuke_art)です。
今日紹介するのは、映画『ホドロフスキーのサイコマジック』。
コロナでどうなるかと思いましたが、2020年6月12日(金)から順次、劇場公開されています。
サイコマジックとは、ホドロフスキーが独自に考案した心理療法。
悩みを持つ人々にホドロフスキーが行うのは治療行為ではなく、サイコマジックという「行動」を伴うアートだと言います。
一見かなり怪しく見えるのですが、見ているうちに何だか…。
サイコマジックとは何なのか
私が初めてサイコマジックに触れたのは、あいちトリエンナーレ2019「情の時代」。
表現の自由とは?と問題になったあの芸術祭のなかで、異彩を放つ作品が展示されていたのです。
最初に見たものは、壁に貼られたたくさんの手紙でした。
それは、サイコマジックを受けた人たちからホドロフスキーへの手紙。
日本語訳された冊子も配布されていました。
「儀式」というのが何とも怪しい。
さらに次の部屋には、映像が映し出されていたのです。
なんだか怪しい。
あやしい。
あやしすぎる。
私は「ネタ」だと思っていました。
つまり、カルト教団を皮肉る意味で、こうした作品をアートとして作ったのだろうと。
ところが。
半年後に私は出会うのです。
この映画『ホドロフスキーのサイコマジック』に。
映画を見て私は、あいちトリエンナーレ2019「情の時代」になぜこの作品が展示されたのか、理解することになるのです。
映画『ホドロフスキーのサイコマジック』とは
「サイコマジック」とはホドロフスキーが考案した心理療法である。本作では自身のこれまでの作品での映像表現が、いかに「サイコマジック」という技法によって貫かれているかを解き明かしていく。実際にホドロフスキーのもとに悩み相談に訪れた10組の人々が出演し、「サイコマジック」がどのように実践され、作用しているのかを描く。
ホドロフスキーは、自身をフロイトと対置した上で、「サイコマジック」は科学が基礎とされる精神分析的なセラピーではなく、アートとしてのアプローチから生まれたセラピーであると語る。長年にわたり個人のトラウマに応答する一方、本作後半で社会的な実践「ソーシャル・サイコマジック」を展開する様子は圧巻!
ホドロフスキーはいくつも映画を作っていますが、それらの映像表現もサイコマジックだと言います。
実は過去の2作品は、あのジョン・レノンが絶賛、権利を買ったことで話題となりました。
正直、映画『ホドロフスキーのサイコマジック』本編には、予告動画には出せないような衝撃の映像がいっぱいです。
変態!?アート!?カルト!?セラピー!?
サイコマジックは行動を介したセラピーだ
映画は、サイコマジックの原点となったマッサージ?の映像から始まりますが、それがいきなり衝撃です。
それは、母の愛をめぐる兄弟の葛藤を癒やすものでした。
そこから次々と、悩み相談に訪れた人との「サイコマジック」実践が描かれます。
たとえば。
父による虐待を受けてきたことから、毎日自殺を考える男。
ホドロフスキーは彼の身体を土に埋め、なんとそこへ肉をばらまきます。
すると鳥たちがその肉を食い散らかすのです。
まるで死体に鳥が群がるように。
その後、男の全身にミルクがかけられ、そして…。
誰も観たことのない、ものすごい映像です。
つまりそれこそ「アート」なのです。
まとめ
ご家族と観るのは難しい映画かもしれません。
ただ、あんなに胡散臭いとバカにしていた、カルトやスピリチュアルなどに否定的な私が、どこかこの「サイコマジック」には根拠のようなものを感じ、たしかにこれは癒やされるのかもしれないと納得してしまいました。
しかも、映画を見ている私も心を揺さぶられたのです。
そう。
あいちトリエンナーレ2019「情の時代」になぜこの作品が展示されていたのか、それが分かった気がしました。
何より、そこに「アート」を感じるのが興味深いところ。
ここからホドロフスキーの映画を何本も観ることとなった、ホラノコウスケ(@kosuke_art)でした。